日本人の死因第1位である「がん」。
これまでの治療といえば、抗がん剤や放射線治療、手術が中心でしたが、**がん細胞だけを破壊する“ウイルス治療”**という、まったく新しいアプローチが現実のものになりつつあります。
岡山大学と鹿児島大学――2つの大学発研究から生まれた最先端のがん治療薬が、今まさに実用化の最終段階に入っています。
岡山大学発:がん細胞だけを壊すウイルス治療薬「テロメライシン」
岡山大学は2025年、**食道がんを対象としたウイルス治療薬「テロメライシン」**の製造販売承認を、大学発ベンチャー「オンコリスバイオファーマ」が厚生労働省に申請したと発表しました。
■ テロメライシンとは?
• 風邪の原因となるアデノウイルスを遺伝子操作
• がん細胞の中でだけ増殖し、細胞を破壊
• 正常な細胞に感染しても自然に消失
2002年に岡山大学の藤原俊義教授らが開発し、約20年にわたる研究と治験を経て、いよいよ実用化が目前に迫っています。
■ 治験結果が示す高い効果
最終段階の治験では、食道がん患者37人を対象に、
• 放射線治療と併用してウイルスを内視鏡で投与
• がんが消失した割合
• 約6か月後:41.7%
• 約1年半後:50%
これは放射線治療単独よりも大幅に高い治療効果です。
■ 抗がん剤に代わる可能性も
抗がん剤治療で問題となりがちな
• 食欲低下
• 吐き気
• 脱毛
といった副作用が少なく、患者さんの身体的負担を軽減できる治療法として期待されています。
鹿児島大学発:希少がんに挑むウイルス治療薬「Surv.m-CRA」
一方、鹿児島大学でもがん細胞だけを破壊するウイルス治療薬の研究が進められています。
中心となるのは、遺伝子治療・再生医療の専門家である小戝(こさい)健一郎教授です。
■ ウイルスを「薬」に変える発想
小戝教授らが開発したのは、
• アデノウイルスの遺伝子を改変
• がん細胞でのみ増殖
• 正常細胞では増殖がストップ
する独自技術「Surv.m-CRA」。
「ウイルスを人類の敵ではなく、味方に変える技術です」
まるでSF映画のような発想ですが、現実の医療として形になっています。
対象は10代に多い希少がん「原発性悪性骨腫瘍」
この治療薬が目指すのは、原発性悪性骨腫瘍という希少がん。
• 主に10代で発症
• 国内患者数は500〜800人程度
• 有効な治療法が確立されていない
■ 2027年の本承認を目指して
• 第2相治験まで終了し、安全性と効果を確認
• 現在は最終段階の医師主導治験を実施中
• 順調に進めば、2027年にも本承認・実用化
日本で「条件付きではない本承認」を受ければ、国内初・世界でも2例目となる可能性があります。
さらに進化する「次世代ウイルス治療」
小戝教授の構想は、ここで終わりではありません。
次の世代では、
• 免疫を活性化する遺伝子をウイルスに搭載
• 転移したがんにも効果を発揮
する治療薬の開発を目指しています。
これが実現すれば、
• 膵がん
• 進行した乳がん
• 胆管がん
など、治療が難しいがんにも新たな希望が生まれます。
大学発スタートアップが医療と地域を変える
鹿児島大学発のスタートアップ**「サーブ・バイオファーマ」**は、
• 約10億円の出資を受けて設立
• 国内製薬会社と提携し商用化を準備
• 成果は大学や地域経済にも還元
医療の進歩だけでなく、地方発イノベーションの成功モデルとしても注目されています。
まとめ:がん治療は「苦しい治療」から「狙い撃つ治療」へ
• がん細胞だけを破壊するウイルス治療薬
• 副作用を抑え、患者負担を軽減
• 日本の大学研究から世界最先端の医療へ
抗がん剤や手術が難しい患者さんにも、新たな選択肢をもたらす可能性があります。
「がん=治らない病気」から「制御できる病気」へ。
日本発のウイルス治療が、その未来を大きく変えようとしています。
参考元
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